2011/04/12

リビアからの脱出 (Part 2: 会社による社員救出)

「東日本大震災」が発生したのは、1ヶ月前の3月11日午後でした。死者・行方不明者は、27,000人と報道されています。お亡くなりになった方々とご遺族の皆様に対しお悔やみを申し上げます。被災された方々が一日も早く活力を取り戻しされることを、心よりお祈り申しげます。

私も少しですが、地震により損害を被りました。余震(あるいは別の地震の前震?)も不安です。それ加えて、TVで報道される被災地の映像、福島原発の事故、そして公共広告機構(AC)の単調でしつこい広告により、心理的にはひどく気落ちし、その状態が続いております。

ブログの更新をできずにおりましたが、気持ちを切り替えるため、PCに向かうことにしました。最初の数本の記事は古いニュースを紹介しますが、できるだけ早く、新しいニュースについて書きたいと思います。

さて、今回は第2回目です。
Part 1: 外国人労働者の内訳
Part 2: 会社による社員救出 (Part 3: 日本政府の邦人救出)を一緒にします。

北アフリカや中東で起こっている反政府運動・民主化運動は、かつて1960年代後半に世界中で起こった学生運動に似ている気がします。もしこの考えが正しければ、世界中の不満を持っている民衆が共鳴し、広がっていくでしょう。そのような国には選挙がなかったり、あっても不正なものだったにするので、民衆は暴力的行動にでる可能性が高いと思います。

日本人は世界中に滞在していますが、今回のリビアのような混乱が起こった場合、円滑に脱出することができるでしょうか?前回の記事で紹介したように、リビアでは多く外国人労働者がおりましたが、特に韓国と中国の脱出作戦には学ぶことがありますので、紹介します。

韓国の建設会社はリビアで韓国人だけで1400人、その他、インド・エジプト・マレーシアなど第3国の作業員を雇用していましたが、その企業に関係していた全員をリビアから脱出させました。


【 ニュース 】

1.韓国

リビア建設現場、韓国は外国人作業員たちを捨てなかった」 [1]

2日午後1時40分(以下、現地時間)。リビアのミスラタにギリシャ国籍の大型旅客船1隻(ニソスロドス号)が入港した。大宇(デウ)建設がリビア建設現場の作業員を退避させるために急いで借りた船だ。ロドス号が接岸する瞬間、港に集まっていた作業員は「助かった」「家に帰れる」と言って喜んだ。

ミスラタで船に乗ったのは計499人。このうち韓国人は55人だけだ。そのほかは大宇建設が雇用したインド・エジプト・マレーシアなど第3国の作業員だ。 

大宇建設はロドス号のほか、トリポリ・ベンガジにも旅客船1隻ずつを投入した。3隻の船で退避させる大宇建設の作業員は計2772人。このうち韓国人は164人。

  エジプト作業員のムハムマド(38)は「会社(大宇建設)が私たちのことまで考えてくれるとは思っていなかった」とし「韓国建設が強国の地位に上がったのには理由があった」と涙を浮かべた。

  大宇建設は第3国の作業員が各自の故郷へ帰れるよう航空券も準備した。航空料と船舶運賃・賃貸料を合わせると60億ウォン(約4億7000万円)を超える。大宇建設の徐綜郁(ソ・ジョンウク)社長は「今はお金が問題ではなく作業員の安全が優先」と述べた。

  大宇だけではない。現代(ヒョンデ)建設も旅客船2隻を借りてスルテから約730人(韓国人94人)を避難させた。現代建設の金重謙(キム・ジュンギョム)社長は「第3国の人も韓国人もみんな同僚。生死をともにするのは当然だ」と語った。

  他国の建設会社の多くは第3国の作業員の面倒を見ない。このためエジプト・チュニジアの国境には外国の建設会社が雇用した第3国の人たちが難民になって集まっている。

  国土海洋部のド・テホ中東対策班長は「外国の建設会社が自国民だけを救出し、(リビア国境には)難民が増えている」とし「第3国の作業員まで避難させる会社は事実上、韓国の建設会社しかない」と説明した。

  現代建設が手配した船に乗ったマレーシアのアリ氏(31)は「(韓国の建設会社に雇用された)私は運がよかった。他国の会社の建設現場で働いている故郷の友人は難民になった」と話した。

  危険な状況であるほど輝きを放つ「家族意識」は‘建設韓流’の原動力だ。海外建設協会のイ・ジェギュン会長は「昨年、韓国の建設は半導体・自動車より多い715億ドルを稼いだ。こうした建設韓流は国内企業が人道主義に基づいて信頼を積み重ねてきたおかげ」と評価した。

  03年にも前例がある。米軍がクウェートを侵攻したイラク軍隊を爆撃する時、SK建設はチャーター機を動員し、第3国の作業員を安全地帯に避難させた。この時に感動を受けた作業員は戦争が終わっていないにもかかわらず自ら復帰し、工事を適時に終えることができた。

2.中国

「リビアから中国人救出、国力増強の表れ」 [2]

北京時間3月2日夜までに、帰国を申し込んだ中国人、合わせて3万5860人がすべて救出されました。これは中華人民共和国にとり「建国以来最大規模」の海外での自国民救出活動となります。
2月16日、リビアの治安状況が重大局面に陥って以来、各国は自国民をリビアから引き揚げるようになりました。

中国は自国民の救出においていくつかの困難に直面していました。まず、帰国願望のある人が多く、しかも救出時間が短いこと。10日間以内に3万人以上を安全かつ秩序をもった救出をすることは未曾有のことです。また、救出しようとする人が離れた場所にいること。中国人がリビアのあちこちに散在しており、一部中国系プロジェクトのキャンプは砂漠の奥にあり、これらの人々を安全に集めることは一大事です。さらに、リビアの状況が複雑なこと。リビアは混乱状態にあり、交通機関や公共施設がほとんど麻痺状態に陥っています。

今回の救出活動にあたっては民間航空機や船舶、長距離バスなど様々な手段がとられ、さらに、軍用機や軍艦も用いられました。これは経済力がなければできないことです。

1990年代から、中国外務省は領事保護に関するメカニズムの構築に取り組みはじめました。ここ数年、中国政府は「外交は国民のため、国民を元とする外交」という理念を念頭に、最大の努力を払って海外にいる国民の利益を保護しています。このメカニズムによって、海外にいる中国人が危機に直面した場合、外交、空運、海運、華僑関連事務などの担当部門が歩調をあわせて、速やかに救出活動を進めることができます。

今回の救出活動で、ギリシャ、エジプト、チュニジア、マルタ、トルコなどの周辺国家から、通関手続きや大型フェリーのレンタル、宿泊ホテルの提供、大型旅客機の離発着など多方面にわたる支援が得られました。宋涛外務次官は「関係する国家は中国の救出活動に様々な便宜と協力を提供してくれた」として、「中国も可能な限り12の国の約2100人を助けた」と述べました。

今回の救出活動は中国政府が命を尊重し、人権を重視していることの表れでもあります。あるリビアから救出された人は政府の速やかな救出活動によって「中国人としての尊厳と中国人の団結力を感じた」と話しました。 (以下 略)

写真


【 解説 】


1.外国人労働者のリビア脱出

リビアの人口 約650万人の内、混乱の前に、リビアには外国人 150万人~250万人が働いていた。[3] 3月5日の国連発表によると、リビアを離れた外国人は19万人に達した。[4] リビアから陸路でチュニジアとエジプトに脱出した人数は14万人おり、その内相当数は難民状態になっている。[5]裕福な国の労働者は空路・海路で脱出して母国に帰国しているが、発展途上国からの労働者は陸路でチュニジアあるいはエジプトに向かっていると考えられる。

2.日本人の脱出の状況

(1) 平常時の邦人数は約100名(石油探鉱会社、商社など18社が進出している。)

(2) 2月22日以降動向
2/22:在留邦人数80人、その他旅行者7~8人 (23日現地発の民間航空機で出国する予定)
外務省は、リビア渡航延期を勧告した。[6]

2/23:日本政府は邦人救出のため、チャーター船1隻を派遣する方向で検討に入った。[7]

2/24:52人[8]

2/25:23人[9]
4人:米国のチャーター船による出国に向け待機中。
7人:トリポリから離れた地域に住んでいる。
3人:大使館員。
9人:現地で結婚するなどしており、出国の意思はない。

3/1:14人[10]
  4人:韓国がアレンジした船で出国予定。[11]
  1人:民間企業社員(@ベンガジ)[12]
  9人:現地で結婚するなどしており、出国の意思はない。

3/4:政府は閣議で、「邦人退避支援に係るマニュアルは存在しない」とする答弁書を決定した。(自民党の山谷えり子参院議員の質問主意書に対する答弁。)[13]


【 コメント 】

1.今回紹介した韓国の建設会社は、自国民の社員だけでなく、外国人労働者も救出した。大宇建設の社長は「今はお金が問題ではなく作業員の安全が優先」と述べ、また、現代建設の社長は「第3国の人も韓国人もみんな同僚。生死をともにするのは当然だ」と発言している。立派である。日本の建設会社はアルジェリアで高速道路を建設しているが(COJAAL アルジェリア東西高速道路建設工事)、万一、アルジェリアで同じ事態が発生したら、韓国の会社と同じように対処してもらいたい。

2.海外に滞在している邦人が脱出するケースは今回が最後ではないだろう。政府は、①自衛隊機(艦艇)の派遣について議論し、②「邦人退避支援マニュアル」の作成・法整備をして欲しい。

3.在外公館においては、当該国独自の避難マニュアルなどを作って、ホームページで公表、あるいは少なくとも在留者には周知させてもらいたい。なお、2月上旬にエジプトで大規模なデモが発生した際、在エジプト日本大使館は、HPやFM放送を使って邦人に情報を提供したが、参考になる。[14]


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【 参考文献 】

[1] 中央日報、2011/03/04
[2] CRI、2011/3/3
[3] 人口650万人:http://esa.un.org/unpp/index.asp
外国人労働者:
150万人の説 
http://www.immigrationmatters.co.uk/millions-of-migrant-workers-trapped-in-libya.html
http://www.trust.org/alertnet/news/un-plans-to-launch-libya-crisis-appeal-on-monday/
250万人の説
http://www.usatoday.com/news/world/2011-03-05-migrant-workers-libya_N.htm
[4] Over 190,000 flee Libya unrest: UN (2011/3/5)
[5] Over 140,000 flee Libya to Egypt and Tunisia, UNHCR steps up efforts to support refugees and civilians in Libya (2011/3/1)
[6] 邦人87人の安全確認=リビア渡航延期を勧告-外務省
[7] 日経 2011/2/14 「政府、リビア邦人救出へチャーター船検討」(リンク切れ)
[8] リビア在留の邦人退避へ 24日中にも (2/24)
[9] 7人のリビア邦人 なぜ政府は救えない
[10] リビアの在留邦人4人 出国へ (NHK,3/1)
[11] 日本の電機メーカー勤務。韓国企業が手がけている発電所のプラント事業に参加。
[12] 「リビア 最後の在留邦人が出国」(NHK,3/6)
[13] 「邦人退避マニュアルはない」政府が答弁書 国際情勢の悪化時(2011/3/4)
[14] 在エジプト日本大使館HP

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